過疎地域での保健指導が活動度と家族関係に及ぼす効果

 リハビリテーション(以下リハ)資源に恵まれない過疎地域では,訪問リハや理学療法を主とした訪問指導は行われていないため在宅障害者を十分に支援できないことがある.本研究の目的は,過疎地域の保健福祉担当者と理学療法士(以下PT)との連携によって一定期間継続して行った訪問指導(以下訪問指導)が対象者の日常生活活動(以下ADL)・家族関係に及ぼす効果について分析することである。

 

 青森県内の過疎地域3か町村で,平成11年8月から同14年3月までの間に訪問指導を実施した在宅障害者と主な介護者97例を調査対象とし,うち死亡や入院などを除く記録の完全な57例を分析対象とした(介入群).介入群の障害者の平均年齢は69.5±10.7歳(男32名,女25名)であった.コントロール群は,訪問指導を実施していない同県内の別の過疎地域2か町の在宅障害者と主な介護者27例であった.同群の障害者の平均年齢は70.5±8.5歳(男15名,女12名)であった.

 訪問指導は,青森県立保健大学教員であるPTと同大学に協力依頼のあった町村の保健師,看護師,ソーシャルワーカーがチームを編成し実施した.介入群では訪問指導開始前の初期評価時とその6~24か月後の再評価時に,コントロール群では平均6か月間の前後2回の時点で,障害者の日常生活活動と,障害者と家族主介護者との家族関係を評価した.ADLはBarthel Indexで,家族関係は伊藤らの在宅障害者家族関係評価表(総合36点)(以下家族関係尺度)を使用し測定した.解析には構造方程式モデリング(以下SEM)の平均構造モデルを用いた.「初回ADL」「2回目ADL」「初回家族関係」「2回目家族関係」を潜在変数とし,前者二つの指標をBarthel Index,後者二つの指標を家族関係尺度の障害者得点・家族得点とした.「初回ADL」から「2回目ADL」へ,「初回家族関係」から「2回目家族関係」へ因果経路を結び,多母集団同時分析により介入群の各潜在変数の平均および切片を分析した.

 

 SEMの結果,介入群の「1回目ADL」の平均は-22.17(P<0.05)であり,訪問指導実施前の介入群のADL自立度はコントロール群より低かったことが示された.平均構造モデルでこの被検者割付のばらつきを調整した上での介入群の「2回目ADL」は7.74(P<0.05)でADL自立度が向上したことが示された.一方,家族関係尺度得点は,介入群で初回得点より2回目得点が有意に高かったにもかかわらず,「初回家族関係」の平均は1.13(P=0.212),「2回目家族関係」の切片は1.09(P=0.228)であり,両者とも5%水準で有意でなかった.

 

 

 過疎地の在宅障害者を支援する場合,PTを含む保健福祉の専門職による理学療法を主とした訪問指導により対象者のADL自立度が向上する効果が示唆された.一方,家族関係は訪問指導によって改善したとはいえず,訪問指導以外の何らかの要因が家族関係の向上に寄与した可能性が考えられる.